アーキテクト工房 Pure
私は入社するまで、まったく知らなかった「断熱・気密」という言葉。
しかしここ数年、住宅業界で「高断熱・高気密」について売り出している企業や工務店が増えてきており、
家づくりにおいて切っても切り離せない存在に。
知っているのと知らないのでは、家づくりに大きな差が生じるかもしれません。
今回は、その一つ「気密」についてご紹介していきたいと思います。
CONTENTS
まず、始めは「気密」というものが何であるのか
私なりに紹介していきたいと思います。
気密とは、密閉して気体の流通を妨げ、気圧の変化の影響を受けないようにすること。
(大辞泉より)
簡単に言うと、外と内とで、空気が出たり入ったりしない状態のこと。
住宅においては、いらない隙間がないことを指します。
窓や扉、壁と床・屋根との間、コンセントなど
たくさんのすき間のできやすいポイントがあります。
特に窓際などですき間風を感じたりしたことがある方が多いと思います。
そのような本来は必要ない、あってほしくない、いらないすき間を無くして、外の影響を受けないようにするのが「気密」ということになります。
そもそもなんで「気密」が必要とされているのか?
確かにすき間風が入ってくるのは不快ではありますが、
それだけのためにわざわざ気密を行うの?と思うかもしれません。
しかし、そのすき間が時として
家に深刻なダメージを与える可能性があるのです。
それを知るために簡単にお家づくりの歴史について
要点だけをご紹介したいと思います!
日本では、最初に北海道で断熱化が始まりました。
寒い地域での防寒対策が必要不可欠。
しかし暖を取ろうにも、暖かいのはいろりや石油ストープなどの周りだけ。
断熱化されてない家の中は、外の影響を受けやすく温かくするには多くの資源が必要となりました。
そこで防寒対策かつ省エネルギーになると考えられたのが、住宅の断熱化です。
断熱は外から寒さを防ぎ、中からの熱を外に逃がさないと考えられました。
断熱化によって中を温かくすることは出来ましたが
代わりに発生した問題が「結露」になります。
それも壁の中で発生する内部結露と呼ばれるものです。
原因としては、断熱化されて温かい室内にすき間から外の冷たい風が入ってくることで
温度差ができ、水分が凝結して結露へと至ってしまいます。
結露がもたらす悪影響としては代表的なのが
・木材や断熱材が腐る
結露にとって発生した水分・湿気によって
木材が腐ると、脆くなってしまうため耐久性・耐震性の低下につながります。
また断熱に関しても、腐ることによって断熱性能が低下してしまうので、本末転倒の結果に。
・カビやダニの発生
水分・湿気を好物とするカビやダニが繁殖しやすい環境に。
さらには、アレルギーやシックハウス、小児ぜんそくなど健康被害を引き起こす可能性も。
断熱化で発生した結露を防ぐために着目されたのが、「気密化」。
内部結露が発生するのは、家のすき間が原因であることが分かり、そのすき間を無くせば問題が解決できるという結論に。そのため気密施工が行われるようになりました。
家を省エネルギーで快適にするためには、
断熱化だけでは不十分、それどころか。
その問題の対策が必要となるのも頷けます。
断熱化だけを行って、結露が発生したように
気密化を行うと何か良からぬことが起きるのではと考える方も多いかもしれません。
ここでは、気密のメリットとデメリットについてまとめていきます!
前の項目でも紹介したように気密化によってもたらされるメリットは、
・壁の中の結露を防止
・隙間からの空気の出入りが減るため、省エネかつ快適性の向上
上記の2つの他にも様々なメリットがあります。
・計画的な換気ができる
すき間がないことで可能となるのが計画的な換気。
リビングやダイニング、寝室などに新鮮な空気を供給でき、空気が汚れやすい浴室やトイレなどから空気を吸い外へと排出することが計画することが出来ます。
すき間があると、予期せぬところから空気が出入りしてしまうため、必要ない空間に空気が入り、必要な部屋には入ってこないという可能性もあります。
・施工精度の確認
気密施工は、どこに隙間があるのか、どのように防げばいいのかを分かっていなければ行うことはできません。そのため、気密を確保できるかは施工精度に大きく左右されます。
一概には言えませんが、気密性能が高いということは施工がしっかりなされている証明にもなりえます。
・シックハウス症候群の原因に
気密性能が高いと、窓などの開口部を開けてない限り自然に空気の入れ替わりが起こりにくくなります。そのため家に使用した材料から発生した物質やハウスダストなどが原因で頭痛やめまい、吐き気などを発症するシックハウス症候群の原因になる可能性があります。
そのため換気機能が不十分であると、気密がデメリットになってしまいます。
・集中的な弱点に
気密施工を行った場合注意しなければいけないのが、気密層は連続していることが原則されていますが、
もし、気密層が途切れたり、施工されていない部分があると、その部分一点に空気が出入りするようになり、
集中的に結露が発生し、部分的な耐久性や耐震性の低下につながる可能性がありますので、施工には注意が必要です。
最後に、気密性能をどうやって知ることができるのか紹介したいと思います。
そのお家の気密性能がどのくらい分かるのが気密測定。
気密性能が高い=お家のいらないすき間が少ないということになり、
気密測定によって計測することが出来ます。
ここで知っていただきたいことが、
いらないすき間の面積は、実測(気密測定)によってのみ計測することができるということです。
つまり、公式などからの計算や傾向からでは、その家の気密性能は求めることが出来ません!
一棟一棟にそれぞれの固有値があり、同じになることはないので
気密性能が知りたい場合は、実測(気密測定)を行うしかないのが現状です。
気密測定によって、求められるのが専門用語でC値と呼ばれるもの。
C値と言われても 何?となる方が多いと思います。
簡単に言うと、家にどのくらいの比率でいらないすき間があるのかという指標です。
実際に気密測定では、いらない隙間の面積が測定することができます。
(下写真(結果シート):〇がいらない隙間面積)
C値は、この隙間面積を家の延べ床面積で割ったものになります。
C値=総すき間面積÷延べ床面積
(赤:延べ床面積、青:総すき間面積)
※延べ床面積は、家の形状や断熱方法など条件に応じて算出方法が定められています。
この数値が小さければ小さいほど気密性能が高いということが言えます。
1m×1mの中にどのくらいの大きさ相当で表すことで
家の規模がが違っても、どのぐらいの比率ですき間があるのか比較することが出来ます。
方法としては、減圧法と加圧法と呼ばれる2つがあります。
測定には、以下の写真のような機械を使います。
(左:検出器、右:送風機)
〇減圧法:送風気によって、お家の中の空気を強制的に外に出す。
〇加圧法:送風気によって、お家の外の空気を強制的に中に入れる。
どちらもすき間から空気が出入りしやすい状態にします。
そうすることで外と中に空気圧の差(圧力差)によっていらないすき間の面積を測定することが出来ます。
減圧法と加圧法、それぞれの測定を行ったとき
C値にずれが生じる場合があります。
大きな要因としては、
窓や玄関の種類や開く向きが挙げられます。
例)窓が外開きの場合。
窓がお家の外側に開く外開き。
・減圧法
窓が閉じる方向に空気が動こうとするので
窓の隙間がなくなるようになります。
・加圧法
窓が開く方向と同じ方向に空気が動こうとするので、
窓の隙間が広がる可能性があります。
この例の場合、減圧法のC値がいい結果になることが予想されます。
こういった窓や玄関などの違いによって、C値にずれが生じやすくなっています。
現状では、気密測定を行っていても減圧法のみの企業さんが多く見られますが、家の気密性能により近いのは2つの測定の平均値と考えられています。
日本の窓は外開きが多いため、主に減圧法が行われている要因の1つでもあります。
(梅雨や秋雨など、雨が多い国なので水が室内に入りにくいために外開きが多いと考えられています。)
気密について特に知ってほしいことは、2つ。
気密施工は、家を快適にするために行われているもので、決して家を息苦しくしているのではないということ。断熱を行う場合、気密も行わなければ十分な恩恵を受けることができません。
そして、気密性能は憶測で判断することはできず、現状は実測(気密測定)でしか求めることが出来ないということ。
後悔しない家づくりをするためにも知っていて損はない「気密」について。
ぜひ知識の一つとして頭の片隅に入れて置いていただき、家づくりについて考えていただければと思います!