※※このブログは、新建新聞社さんの
参考にして書いています。※※
「家のつくりやうは夏をむねとすべし。
冬はいかなる所にも住まる。
暑き頃わろき住居は堪へがたきことなり」
(徒然草 第55段)。
兼好法師が750年ほど前に徒然草で書きのこした言葉です。
「住まいは夏の暑さのことを考えて工夫しなさい。
冬はどのようにしても、どのようなところでも暮らすことができます。
夏の暑いころに、備えの不十分な住まいはとても耐えられるものではありません。」
という意味だそうです。
鎌倉時代は温暖期と言われていて、
比較的暖かい気候だったそうです。
今ではエアコンや扇風機などでお家の中での暑さを
しのぐことが簡単になりましたが、
当時は今ほど画期的なものはなかったでしょう。
実際に、夏の暑さをしのぐために、
太陽熱を直接室内に入れない
「よしず」や「すだれ」などの道具が利用され、
また風通しを確保するためにありとあらゆる工夫がなされていたそうです。
これは今でも残っていてなじみ深い工夫ですね。
一方で冬はというと、
日本独自の工夫というのは特になかったようで、
服を着込んだり火鉢で暖をとったりしてしのんでいたそうです。
人が1年のなかでどの時期に最もたくさん亡くなったか、
という調査は、一番古いもので1910年(明治43年)頃から行われていたそうです。
次の図がその調査結果を示したものです。
1910年~1970年までのデータとなっています。
1910年(明治43年)当時は
8月の夏の時期が最も死亡者が多くなっていることが読みとれます。
しかし、以降のデータを見ると、
夏の死亡者が減り、
逆に冬の死亡者が増えていることがわかります。
1970年頃には冬が最も多い季節となり、
夏は最も少なくなっています。
1970年以降は、死亡者数が毎年夏が少なく
冬が多くなっているそうです。
それは最近のデータ(次の棒グラフ)を見ても言えると思います。
しかし、こちらのリンクサイト内(ニッセイ基礎研究所HP)で言われているように、
寒暖差からくる血圧への影響が大きいため
冬の方が死亡率が高いですが、
最近では地球温暖化の影響で平均気温が上昇傾向にあるので、
冬の方が死亡率が高いからと言って
夏は大丈夫というわけでもないのが現状です。
月別死亡者数が夏から冬でどの程度上昇するか、
を示すことを、
死亡率季節間変動と言います。
次の棒グラフは死亡率季節間変動の国際比較を表したものです。
日本やスペイン、イタリアよりも寒いとされる
カナダやスウェーデンのほうが、
死亡率季節間変動の確率が低くなっています。
日本の厚生労働省に相当する
英国の健康省の2009年白書では、
上の図のような国ごとの死亡率季節間変動率の変化の動きについて、
「寒い国では冬に対する備えが進んでいるために、
冬季の死亡率がそれほど増加しない。
暖かいとされる国では冬に対する備えが遅れているために、
冬季の死亡率が増加している。」
と考察しています。
また、世界保健機構WHOの公式見解では、
英国の健康省の2009年白書と同じように、
欧州南部では冬の低温への対応が遅れていることが
原因と考えているそうです。
さらに、低温による健康被害は、
欧米では当たり前の常識になっていると言います。
2018年11月27日にWHO(世界保健機関)が
住宅と健康に関するガイドラインを発表しました。
住まいの質が健康に大きな影響を与えるということが、
いくつかのポイントごとに整理され発信されていて、
その中でも、
健康へのリスクを回避するために
「暖かい室内環境」をつくることを強く勧告しているそうです。
住む人の健康を守るためには、
寒い時期でも室内温度は18℃をキープしましょう
ということも提言されていることから、
やはり低温は、健康障害となる可能性がある
ということが言えるでしょう。
日本のみならず、比較的暖かい国で後回しにされてきたという
冬の寒さ・寒暖差対策。
最近になってやっと、
暖かい国での
寒暖差による健康への被害が見直され、
本格的に改善され始めました。
これからつくられるお家は
工夫さえすれば
冬の寒さ・寒暖差対策がしっかりしているお家づくりが可能です。
日本においての夏の暑さ対策も大事ですが、
冬の寒さ・寒暖差対策も健康で快適な暮らしをするために大事です。
一年を通して快適なお家づくり、
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